2012年9月17日月曜日

チェルシーはFFPを乗り切る方法を見つけたかも知れない/ Chelsea might find FFP solution.

ちょうど去年の今頃、UAEの王族アブダビファミリーがオーナーを
務めるマンチェスター・シティは同じくアブダビファミリーがオーナーの
エティハド航空とスポンサー契約を交わした。契約額はプロスポーツの
スポンサー契約としては史上最高額となる10年・1億5千万ポンド
(=約190億円)と言われている。

これはいささかずうずうしいやり方ではあるけれども、金満クラブに
とっては差し迫ったファイナンシャル・フェア・プレー(以下FFP)を
乗り切るためにはお手頃な方法ではある。



チェルシーは先日ガスプロム社相手にこれと同様のスポンサー契約を
結んだ。ガスプロム社はロシア最大の企業である、彼らとチェルシー
との契約は3年間。契約金額は公表されていないが、もちろんこれは
商業的な目的ではなく、実質的にはチェルシーのFFP対策のスポンサー
契約であることは明白なので莫大な金額であるのは間違いない。

ただこれには1つだけ問題がある。
『UEFAは関係会社との過大なスポンサー契約を禁じている。』
 のである。ガスプロム社が実質的にアブラヒモビッチの意のままに
動く企業であることは周知の事実であり、この規則の”本来の”趣旨
から言えば、この契約は禁止事項にあたり、無効である。

ここで問題となるのが”関係会社”という言葉の解釈である。
チェルシーのオーナー、アブラヒモビッチはガスプロムのオーナー
でも株主でも無い。但し、自身がオーナーであったシブネフチ社
(ロシアの石油企業)を2005年に84億ポンドでガスプロム社に譲渡した
経緯が有る。

UEFAの規則では、スポンサーに対して”明らかな影響”を持つ会社
との取引を「関係会社取引」と定義している。
そして”明らかな影響とは、スポンサーの経営及び財務面における
方針の意思決定に参加する権限を持つことである。
もちろんアブラヒモビッチは同社の役員でも株主でも無い為、
形式的には”明らかな影響”は無いことになる。ただこのスポンサー
契約がアブラヒモビッチの指示で行われた事は誰もが知っている
事実だ。UEFAはこの件をどう判断するのであろうか。
(そもそも、携帯電話や車のメーカーならともかく、天然ガス製造販売
会社が贔屓のチームのスポンサーになったからといって、英国人が
ロシアからパイプラインを引っ張ってきてガスプロムの天然ガスを
使おうなんて話が有り得るだろうか?)

もしマンチェスター・シティが史上最高金額のエティハド航空との
契約についてUEFAの追求をかわすことが出来るのであれば
チェルシーのガスプロム社との契約も間違いなくUEFAのチェックを
パス出来るだろう。
なぜなら”以前、経営していた会社を過去にガスプロム社に売却した”
という関係性は”同じファミリーが経営している”と比べてずっと希薄
だからだ。


それからチェルシーはこのスポンサー契約がUEFAに認められるように
もう1つ手をうっている。ガスプロム社が今年からUEFAチャンピオンズ
リーグ及びスーパーカップ公式スポンサーとなったのである。
ある会社からスポンサー料として数十億円を受け取っておきながら、
その会社が他の会社と結んだ契約を不正だと追及することなど
UEFAでなくとも不可能なのは明らかである。

チェルシーはチャンピオンズリーグ優勝により5,990万€もの賞金を
獲得し、さらにアウディ、ザウバーF1、デルタ航空そして今書いた
ガスプロムと新たにスポンサー契約を結んでいる。これはおそらく
今までと同じように夏のお買い物を続ける為には十分な金額だろう。

プラティニが出した難題に対して、チェルシーは明確な答えを見つけた。
他のクラブはどんな回答を見つけてくるのだろうか。