2012年9月14日金曜日

ファイナンシャル・フェア・プレーの盲点 / Will FFP be in effect?



ファイナンシャル・フェア・プレー(以下FFP)についてもっともよく
見かける疑問はおおまかに言うと下記の様なものだ。

(疑問)
12/13シーズンからFFPが適用されれば、クラブの赤字は2シーズン
合計で4,500万ユーロ(=約45億円)までに制限される。
しかしミランやインテルと言ったクラブがせっせとコスト削減に励んで
いる一方で、チェルシー、マンチェスター・シティ、PSGといったクラブは
以前と変わらず移籍市場に莫大な金額をつぎ込んでいる。昨シーズン
までの彼等の経営実績からすると、赤字を4,500万ユーロ以内に収める
のは不可能だ。
FFPに違反するとチャンピオンズリーグ等のUEFA主催の大会に参加
出来なくなるのだが、彼等はこの事態を怖れていないのだろうか?


残念ながら私はアラブの王族の一員でも、ロシアの石油王でもないので、
これに対する明確な回答は持ち合わせていない。
しかしこの問題に関しては、多くの人が見逃している重要なポイントが
1つ存在するので指摘しておきたい。
UEFAの定めたFFP規則(A4・87ページにも渡る実に退屈な読み物である)
の"付録第11条"という条項が有る。
規則の最後の1ページに書いてある実に小さな条項なのだが、この内容が
非常にまずいというか致命的なのである。条項の要点を簡潔にまとめると
次の通りだ。

『2シーズン合計の赤字額がFFPの制限を越えていても、赤字額が
縮小傾向に有り、将来的に赤字を解消する見込みがあれば、クラブは
FFP検査をパス出来る』

・・・つまり実際に赤字額を制限内に収めなくとも、最終的には全てUEFAの
さじ加減(将来的に赤字が解消されると判断すれば)でFFPはクリア出来て
しまうという訳である。

これこそがFFP施行における最重要問題なのは明らかである。罰する
立場からすると、FFPの内容をほぼ骨抜きにしてしまうこの条項が有る
限り、FFPは”ルールの問題”というより”UEFAの裁量の問題”となって
しまう。
なぜならどのクラブも口では『将来的には赤字は解消されます』と
言うに決まっているのだから。

もしUEFAがあるクラブをFFPに違反したと言う理由でチャンピオンズ・
リーグから締め出したとしたら、それはルールに従った措置と言うより、
UEFA執行部の判断で参加を許されなかったと見なされるだろう。

この様に明確な線引きが無い状態でFFPを理由に一部のチームを
チャンピオンズ・リーグの様な大きな大会に参加させない事は困難
である。
なぜなら賞金・放映権合わせて数十億円のお金が動くような大会への
参加の可否は、クラブ経営の死活問題になり得るし、訴訟へ発展する
可能性も含んでいるからだ。



これがサッカー関係者の間でFFPが事実上決して機能することは
無いと信じられている理由である。
今のところFFPの存在理由は、クラブのオーナーが大して価値が
無さそうな選手に大金を払うのが嫌な時の言い訳の為だけである。

『最終的にフッキ獲得を断念したのはFFPを考慮したからだ。』
『イブラヒモビッチを放出したのはFFPを考えると仕方無かった。』

こんな風に言っておけば煩いファンも少しは納得するのである。

さて実際にチェックが開始される12/13シーズン末、違反したクラブが
出てきた際にプラティニはどんなコメントを出すのだろうか。


*正確に言うと今回記事にしたFFPの"付録第11条"の解釈に
 ついてはもう少し説明が必要です。
 ただ問題の性質上、かなりの長文になってしまうため、次回改めて
 補足記事を書くことにします。